現代語訳 風姿花伝
世阿弥(著)、水野聡(訳)
PHP研究所
美とは何か
演じるとは何か
人生に「花」を咲かせよ
『風姿花伝』は能の大成者・世阿弥が著した、日本最古の能楽論である。『花伝書』の名称でも知られる本書は、「花」と「幽玄」をキーワードに、日本人にとっての美を深く探求。体系立った理論、美しく含蓄のある言葉、彫琢された名文で構成される、世界にも稀な芸術家自身による汎芸術論である。原文の香気が失われぬよう、かつ自然な現代語としてスラスラと読めるよう、工夫を凝らした現代語・新訳として提供する。
七歳から年代順に具体的な稽古要領を記した「年来稽古條々」、物真似の本質を把握し表現する「物学條々」、Q&A形式の「問答條々」。そして、「花」の本質を説いた「別紙口伝」。章立て・語り口はあくまで明快、シンプルである。大陸伝来の文化から袂を分かち、日本人自ら育て、咲かせた最初の美しい「花」――。風姿花伝は700年を経た今日でも、広く表現に携わる方々はもちろん、人生訓としても読める懐の深い名著である。
〈訳者略歴〉
水野 聡(みずのさとし)
1959年、神戸市生まれ。関西学院大学文学部日本文学科中退。
㈱リクルート、エイボン・プロダクツ㈱、日本ゲートウェイ㈱他にて宣伝部コピーライター、広告制作プロデューサーとして勤務。
2004年独立、能文社を設立。コピーライター、古典翻訳家。謡曲・仕舞、居合道に親しむ。
古典訳書に『強く生きる極意 五輪書』(PHPエディターズ・グループ)がある。
世阿弥
室町時代の能楽の大成者。実名、観世二郎元清(一三六三?~一四四三?)。中年以降の芸名を世阿弥陀仏と称した。申楽に音曲・作曲面で改革を行い、今日の能の基礎を確立した観阿弥の一子で、二代目観世太夫を継承する。
父観阿弥より能役者としての英才教育を、パトロンである将軍足利義満、北朝公家二条良基等により庇護、寵愛を受け高度な上流教育を享受する。稀代の美童にして歌舞の逸材でもあった世阿弥は、天賦の才に加え、これら宮廷文化を存分に吸収。民衆芸能申楽を美と幽玄を主とする総合舞台芸術、能へと昇華・大成させることとなる。
自身、太夫として一座を率いる看板役者であったが、今日なお盛んに演能される数々の名作『高砂』『井筒』『西行桜』等の作者でもあり、本作『風姿花伝』をはじめとする二十一にも及ぶ能芸論書の著作者、理論家でもあった。演者・作者・理論家を一身に兼ね備え、世界芸術史的にも稀な天才と評され、六百年を経た今日においても代表作『風姿花伝』は、その普遍的価値により海外でも訳出され、多くの読者に親しまれている。
第一 年来稽古條々
第二 物学條々
第三 問答條々
第四 神儀に云わく
第五 奥儀に讚歎して云わく
第六 花修に云わく
第七 別紙口伝