ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔

ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔

小泉悠

PHP研究所

暮らしから見える プーチン体制の 静かな実像

「ロシアとロシア人の魅力を、衣食住の面から伝えたい」という本書の内容は、プーチン大統領の蛮行によってその色合いを変えた。新型コロナウイルスの蔓延下、ロシアを観光で訪れることはかなわない。何より頭をよぎるのは突然、ロシア軍の攻撃によって同胞を失い、住む家、町、国を離れざるをえなくなったウクライナ人の悲しみだ。日本人のロシアやロシア人に対するイメージも、好ましくないものに転じたかもしれない。  しかし、だからこそこの本を手に取っていただきたい。もちろん「ロシア政府とロシア人は別」と簡単に割り切ることはできない。では両者の関係がどうなっているのかということを、なるべく柔らかく、わかりやすく説き、「ロシアという国は何か」について、理解を深める必要がある。  著者は執筆にあたり、次のように語った。「自分のロシアへの『愛』を伝える作品にしたい」。その真意を、一人でも多くの読者に感じていただければ幸いである。

小泉 悠(こいずみ ゆう) 東京大学先端科学技術研究センター専任講師。1982年、千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員、未来工学研究所客員研究員などを経て、2022年1月より現職。ロシアの軍事・安全保障政策が専門。著書に『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版、サントリー学芸賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書)などがある。

はじめに 第一章 ロシアに暮らす人々編 無限の不信と信頼が同居する国 宿痾としての汚職 靴下を履かせなさい! ロシア人は突然話しかけてくる マッチョなロシアの社会 ロシア社会を支える「戦略おばあちゃん」 「ルールです」といわれると破りたくなる 多民族国家ロシア ロシア・マフィアとタマネギ屋根 エリートは非常に優秀、中間層は弱い 「六〇点」でよしとするロシア的合理主義 第二章 ロシア人の住まい編 ソ連国民の共通体験「フルシチョフカ」 増殖するベランダ 「プーチンカ」の時代 便座がない! スターリンカから姿を消した人たち ホテル最上階の「ないはずの階」 豊かさの弊害 ロシアを苦しめるゴミ問題 ロシア人は、郊外に〝別荘〟を持っている プーチンも持っている〝別荘人脈〟とは 第三章 魅惑の地下空間編 クレムリン地下六〇メートルの秘密施設 モスクワ大学の地下に巨大地下空間が? 「もう一つの地下鉄」 次第に息苦しくなるインターネット空間 モスクワ地下鉄が育むロマンス 防空壕としての地下鉄 第四章 変貌する街並み編 全国から凄腕のスリが集まる、夏のサンクトペテルブルク 変わるモスクワ ロシアの店が「入りにくい」理由 スーパーのルール 花屋は二十四時間営業 街路案内は英語・中国語併記が標準に 違法商店街の跡から顔を出す「ソ連」 市街地で見かける日本製品 野良犬が〝電車通勤〟 ついにロシア進出を始めた日本の鉄道オタク 軍事オタク狂喜の軍事博物館 第五章 食生活編 ロシア人は辛いものが苦手……かと思いきや ユーラシアの食が集まるロシア 寒さが生んだレストランの「ガルデロープ」 酒は「自分で作る」 二日酔いに効く「艦隊風スープ」 変電器小屋の扉を開けると焼肉屋が レストラン経営で自活する、北朝鮮の大使館事情 ロシアで餃子を作るには 米は「重い」 もう「樽」にならないロシア人 第六章 「大国」ロシアと国際関係編 国力は弱くても「大国」であるロシア プーチン大統領の世界観 「ウラジーミル」は日本をどう見ているか ポスト・ポスト冷戦時代とロシア 深まる中国との関係 もう一つの「本当の主権国家」インド 油断ならない隣人トルコ 正教会をめぐるロシア=ウクライナ=トルコ関係 プーチンが気づいていないこと 第七章 権力編 権力の虜になるプーチン 陰謀論に彩られた「市民社会」観 憲法改正で大番狂わせ プーチン権力の行方 おわりに