何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造

何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造

太田肇

PHP研究所

挑戦すると損をする 何もしない人ほど得をする 日本社会の不都合な真実

橘玲氏推薦!  貧しいニッポン、働かないおじさん、無気力な若者、進まない女性活躍……。実態とは裏腹に、「失敗を恐れないチャレンジ」「イノベーション」といった威勢のいいスローガンが虚しく響く。  なぜ、ここまでに理想と現実がかけ離れてしまっているのか?  乖離の理由は、多くの日本人が消極的利己主義――すなわち自己利益と保身のために、現状を変えないほうが得だという意識を潜在的に持っているためだ。  多くの日本人は、その事実に気づいている。しかし、あえて口にはしなかった日本人の胸裏に隠されたタブーを、本書は大規模アンケート調査により浮き彫りにする。そして、その背景にある「全体主義のパラドックス」についての打開策を提示する。  日本の組織が積極的に挑戦する空気を生むために、必要なこととは?

太田肇[おおた・はじめ] 同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。京都大学博士(経済学)。日本における組織研究の第一人者として知られる。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『同調圧力の正体』(PHP新書)、『日本人の承認欲求』『「承認欲求」の呪縛』(ともに新潮新書)、『「超」働き方改革』(ちくま新書)、『個人尊重の組織論』(中公新書)など著書多数。

第1章日本社会で起きている「保身のリアル」 1コロナ禍で連鎖した中止ドミノ 「やらない理由」がそろえば、撤退は速い 中止の大義名分を探す「エクスキューズ症候群」 2こうして、公務員はやる気を失っていく 個人への責任追及が、萎縮を招く 公務員の主なモチベーションは承認欲求 官僚離れの主因は尊敬の喪失? 「良心の放棄」という社会的リスク 3改革に逆行する役所組織の病理 「ヤヌスの顔」をもつ組織 「ムダな仕事」が減ると、困る人々 第2章組織における「挑戦と保身」のコスパ 1同床異夢の経営者と社員 笛吹かれても、踊りたくない「社員の本音」 会社はなぜ、「見せかけの勤勉」に気づけないのか? やる気をアピールする日本人、しない中国人 挑戦を回避させる制度の仕組み 目標管理されるほど、ハードルを下げたがる やる気に満ちた新人が、「すれていく」 「得意」を明かすと、余計な仕事がまわってくる 挑戦するメリットが小さい「終身雇用」 2挑戦を尻込みさせるトーナメント型キャリア 「いまの会社に、好きでいるわけではない」という日本人の本音 「心理的安全性」だけでは足りない制度の欠陥 3「働かないオジサン」は制度の被害者? 「四五歳定年」という理不尽さ 女性の活躍を阻む「二つの壁」 なぜ、「加点評価」でも挑戦しないのか? 第3章挑戦の足を引っぱる「人間関係」 1仲間の挑戦に対する「本音と建前」 人間関係は挑戦の「隠れたコスト」 正直、チャレンジされると迷惑!? 「がんばりすぎ」がよくない本当の理由 「出世する女性への嫉妬」が足枷に 「内部通報制度」は、切り札にならない 2PTA、町内会は建前論が壁に 「面倒くさいが、断れない」ジレンマ 町内会も女性は否定派が圧倒的 自衛策としての「不熱心」な態度 PTA、町内会の「問題の核心」 善意と同調圧力に甘えてはいけない 3目立つことを極度に恐れる子どもたち 授業で挙手すると冷たい視線 「浮いてはいけない」が、自発性を奪う 「空気」はプラスに働くときもあるが…… 挑戦より、受験勉強に専念するほうが得 入試対策としての「自発的」活動 第4章「消極的利己主義」はなぜまん延したか? 1共同体に依存する人々 長期的に損でも、「何もしない」理由 組織がどうなろうと、かまわない──「共同体の空洞化」 「その場しのぎ」で沈みゆく共同体 2全体主義のパラドックス 「滅私」が招いた「私」の暴走 「個と全体の利害対立」は、認めない 「対立がない」を押し通す理由 「公」を装い「私」を通す人たち 「外」では自ら行動しない処世術 「万人の万人に対する闘争」の裏返し? 機会主義の暴走を防ぐ切り札は…… 3ホッブズに還れ! 「分権の死角」にワナが 「必要悪」としての絶対権力 対立の直視から、長期的展望が生まれる 「総論賛成、各論反対」を踏まえて 第5章「するほうが得」な仕組みへ 1部分最適から全体最適へ 「何もしないほうが得」で、社会は消滅する 日本式制度改革の限界 「やらされ感」をもたらす四つの原因 オープンシステムとしての組織へ 「組織の壁」を薄くする 大学は「社会のインフラ」に 「民主化の三原則」をもとにした制度設計 強制をやめたら参加者が増える「金魚すくいの法則」 セーフティネットを広く張り直す 2「損得の谷」を渡らせる 短期的な損得ではなく、長期的な利益を 対策一 防波堤をつくる──個人の分化 理不尽なしわ寄せを防ぐ仕組み 「ジョブ型」導入も選択肢の一つ オフィスの仕切りも意外に有効 短期に清算する人事 対策二 新しい橋を架ける──複数の選択肢 非「メンバー」と競合させる キャリアにバイパスを設ける 対策三 人々を誘導する──インセンティブ お願いより褒美が有効 隠れた不利益を埋め合わせる 対策四 先導役を入れる──ダイバーシティ 人材が多様化すれば、共同体の呪縛が解ける 先導者としての異質な人材