心を持つAIは作れるのか? いや、そもそも人に心はあるのか?
PHP研究所
あなたは本当に 自分で決めているのか 脳とAIの境界線
本書は、「自由意志」という私たちの根深い信念に疑問を投げかけ、脳科学とAI技術の観点からその幻想を解き明かすことを目的としている。私たちは日々、自分の意志で自由に判断していると信じて疑わないが、実はその「自由意志」こそが脳が作り出した幻想に過ぎない可能性がある。自由意志の正体を解明するために、脳の働きや無意識の作用がどのように私たちの「決定」を形作っているのかを深掘りしていく。 はじめに では、まず「自由意志は脳がつくった幻想である」という立場が提起される。私たちが自分の意志で判断していると感じる一方で、実際にはその「意志」は脳内の無意識的な過程や外的な要因によって作り出されている。さらに、近年の生成AIの進歩が、この問題に新たな視点を加え、私たちの「選択」が本当に自由であるのかを問う契機となる。 第一章 では、自由意志が本当に存在するのか、それとも単なる幻想であるのかという問いに迫る。特に、ベンジャミン・リベットによる実験が取り上げられる。この実験は、意識的な決定が脳内で無意識的な準備が整った後に生じるという驚くべき事実を明らかにした。また、人間の「意識」の働きが無意識に従属していること、さらには私たちの意識が無意識の情報処理に基づいて動いているという「受動意識仮説」に触れ、自由意志の幻想がどのように形成されるのかを考察する。 第二章 では、無意識が私たちの日常的な行動にどのように影響を与えているのかを解説する。意識的な判断が無意識に支配される比率や、無意識下で行われる自動化された行動について説明される。スポーツ選手やアーティストが無意識のうちに優れたパフォーマンスを発揮するメカニズムにも触れ、脳が九割以上の機能を無意識に任せている理由を探る。 第三章 では、人間が自由意志を信じたがる心理について探る。私たちの脳が都合よく時間をひずませ、後から理由をつける「後付けの説明」や「作話」などの心理的メカニズムを紹介する。また、自由意志という概念が文化や時代によってどのように形成されてきたのか、特に日本における自由意志の概念がどのように異なるのかについても考察する。 第四章 では、無意識の働きとそのコントロールについて論じる。無意識は遺伝や学習によって形成され、日々の行動や経験が無意識に影響を与えている。無意識の強化方法や、AIが学習に用いる「教師あり学習」の概念が人間の無意識にも応用できることが示され、これからの時代におけるAIとの共生について考えさせられる。 第五章 では、自由意志が幻想であると認識した上で、どのように幸せを追求すべきかという問題を掘り下げる。自由意志がないからこそ、「私は私である」という感覚を持つことができるのか、そしてその認識がどのように幸せに結びつくのか。幸福学の視点から、無意識の決断がどのように人間の行動に影響を与えているかを探り、シンギュラリティの時代に向けて人間とAIがどのように共存していくべきかを考察する。 本書を通じて、読者は自由意志という概念を再定義し、私たちがどのように選択を行い、どのように幸せを感じるのかを新たな視点から理解することができるだろう。自由意志が幻想であっても、私たちがどのように生きるべきかを考える重要な手がかりを得ることができるに違いない。
第一章 自由意志は存在しない ベンジャミン・リベットによる世紀の実験 長いスパンの決断も「無意識」が下すのか? 私という存在を形作る「意識」とは何なのか? 小びとたちの「無意識」の情報処理──「自律分散的処理システム」とは? 「意識」は小びとたちの行動すべてを把握しているわけではない? 「意識」は何のためにあるのか 小びとたちの社会では多数決で決まる 「私という意識」は主体的に考えていない 「意識」は受動的で何も決めていないという「受動意識仮説」 「自分で決めている!」という感覚は「クオリア」 クオリアは幻想 指先でクオリアを感じる不思議 なぜ脳がない場所でクオリアを感じるのか? なぜ脳はクオリアという幻想を作る必要があったのか 受動意識仮説から見えてきた人間とAIの類似性 AIと普通に会話を楽しめる時代が来る 第二章 無意識を解き明かす 無意識と意識の割合はどれくらいか 「本能的な無意識」と「学習による無意識」 無意識下の脳は「セコム」が働いているようなもの 日常に潜む自動化された行動 スポーツ選手や作家も自動化によって動かされている 脳が9割以上を無意識に任せているわけ 無意識に任せた方が断然パフォーマンスが上がる 本当は無意識なのに意識下の自由意志によって動いたと感じる不思議 第三章 人は幻想を生きている 意識するタイミングは錯覚!? 脳は都合のいいように時間をひずませている 脳は選んだ理由を後付けしている どうして理由の後付けが必要なのか 理由を求めたがるのは本能か? 旧石器時代の人には自由意志はなかった? 日本にはもともと自由意志という言葉はなかった 日本人は本当に自由意志を望んでいるのか AIは意識を持てるのか 今のAIは個性を持たないように作られている 第四章 無意識はコントロールできるのか 無意識は「遺伝」と「学習」の影響を約50%ずつ受けている 遺伝が50%ということは、親から受け継いだ「個性」が半分あるということ 「学習」は脳の使い方次第で変化する ──「使ったところが強くなる」が基本原理 「フィードバック誤差学習」──繰り返しと修正で上達する脳の仕組み フィードバック誤差学習の上達には「教師あり学習」が有効 「毎日の行動」が無意識の働きを強化している 音楽家の頭にメロディが〝天から降ってくる〟のはなぜ? 「好き」で「得意」なことは無意識を育てる最高の栄養 「ジェネラルな能力」はAIが担う時代。苦手を克服するよりも、得意を伸ばす 日本の教育は「苦手をなくす」から「得意を伸ばす」へと変わりつつある これからの時代を生きるために必要なのは、「個性」と「創造性」 人間らしい活動はAIに奪われない AIと生きることで深い創造性を発揮する 人間にできてAIにできないことは「楽しむ」こと 第五章 自由意志のない世界の幸福論 自由意志がない中での行動とは? 自由意志がないなら、犯罪は無罪になるのか? 自由意志はないけれど、拒否する自由はあるのか? 自由意志がないと考えると、気楽に生きられる 受動意識仮説だけでは伝わらない 幸せを感じるメカニズムを科学的に追究する幸福学 いずれ到来するシンギュラリティの時代に、我々は何を思うのか AIと共存する未来のために