なぜあの人は時間を守れないのか

なぜあの人は時間を守れないのか

中島美鈴

PHP研究所

だらしないは誤解 時間を守れない理由 脳のしくみを知る

あなたの周りにも、提出物を締め切りまでに出さない人、時間ギリギリまで行動しない人がいるのではないだろうか?  本書では、そうした時間にルーズな人にイライラする周囲の人や時間管理に悩む当事者に向けて、時間を守れない背後にある問題を突き止め、どのように処すれば、時間にルーズな人の行動を治すことができるのか、また時間にルーズな人に対してどのように接すればよいのかを、公認心理士として数多くの時間管理に関するカウンセリングや研修を行い、九州大学で研究を行う心理学博士の著者が明らかにする。  第1章では、「だらしない」と片付けられがちな行動について詳述する。時間に遅れる、ギリギリで行動する、締め切りを守れないといった行動の背後には、単なる意識の欠如や怠慢ではなく、記憶力や計画力、時間感覚のズレといった心理的要因が影響していることが解説される。これにより、「できないこと」を「しない」と誤解することの問題を浮き彫りにする。  第2章は、時間心理学の視点から、時間感覚の違いについて考察する。例えば、ある人が「5分」をどのように感じるかという点に注目し、報酬への感受性やADHD(注意欠陥多動性障害)傾向のある脳の特性がどのように時間の使い方に影響を与えるのかを示す。  第3章では、実行機能という視点から「動けない」理由について探る。実行機能は、目標を達成するために必要な一連のスキルを指すが、これが発達する過程やその障害が時間管理にどのような影響を与えるのかを述べる。  第4章では、時間管理を阻む考え方や行動パターンについて分析する。特に、時間管理に失敗する原因となる「悪循環」を断ち切るために、考え方や行動のクセを見直し、具体的な対策を講じる重要性が強調される。  第5章では、上司や管理職が部下に対してどのように時間管理を指導すべきかについて解説する。合理的配慮を含む視点から、部下が時間管理に苦しむ理由を理解し、適切なサポートを提供する方法を提案する。また、タスク設計や進捗管理の技法、部下が失敗しないためのリマインドやフィードバックの重要性にも触れる。  本書は、時間管理の問題を「できない」こととしてではなく、「できるようにするために必要な支援」があることを理解することを促す。具体的な事例を通して、時間管理に関する心理学的アプローチを実践的に学び、本人やその周囲の人々がどのようにサポートすべきかを考えるためのガイドとなる内容である。

中島美鈴[なかしま・みすず] 公認心理師、臨床心理士。心理学博士(九州大学)。専門は成人期のADHDの認知行動療法、時間管理、集団認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。朝日新聞デジタル医療サイトapitalにて認知行動療法コラムを連載中。peatixにてオンライン時間管理グループレッスン、セミナー開催中。

第1章 「だらしない」では説明できない行動 1 こんな人いませんか 2 遅刻、締め切り破り、ギリギリの行動の背後にあるもの 3 「できない」ことを「しないからだ」と誤解してしまう構造 第2章 人によって異なる時間感覚──時間心理学の視点 1 「5分」の感覚のズレ 2 報酬への感受性と時間割引 3 ADHD傾向と「未来を感じづらい」脳の特性 第3章 〝実行機能〟の視点から見た「動けなさ」 1 実行機能とはなにか 2 実行機能が育つプロセス 3 発達特性としての「行動の遅れ」の理解 第4章 考え方のクセと行動パターンが時間管理を阻む 1 時間管理の悪循環 2 考え方のクセ 3 行動パターン 第5章 上司が身につけるべき部下への時間管理 1 大人になるとたいてい悪循環にハマっている 2 合理的配慮という視点から考える時間管理 3 「どこで止まっているか」を見極めるフレーム 4 タスク設計:大きな仕事を「小さく区切る」技法 5 進捗管理:スパンは短く、報告頻度は高く、 意志に頼らぬ定期ミーティング設定 6 視覚化と即時フィードバックの導入例 7 部下が失敗しないための「リマインド」「足場づくり」 8 管理職に求められる「適応支援」の視点とスキル