境界知能 存在の気づかれない人たち

境界知能 存在の気づかれない人たち

宮口幸治

扶桑社

見えにくい困難 支援からこぼれる人 境界知能の現実

“境界知能”という言葉をご存じでしょうか?  IQ70以上85未満で生きづらい日々を送り、支援が必要であっても見過ごされてしまう人たち――。近年、インターネットを中心に注目が集まっていますが、その正しい理解をしている人は多くありません。 本書は、まさに境界知能の少年たちを取り上げた、シリーズ累計220万部超の『ケーキの切れない非行少年たち』シリーズの著者・宮口幸治氏による、境界知能について最新の知見を集めた一冊。 『ケーキの切れない非行少年たち』では、非行少年たちを通して境界知能の問題にスポットを当てました。ただ、境界知能の存在について述べただけで、これまでどういった背景や問題があったのか、どのような特徴があるのか、どういった支援が効果的なのかといった具体的なところまでは記していませんでした。 本書では、境界知能の具体的な特徴を軸に、身近な事件やこれまでの歴史、認知的特徴、近年の動向について解説していきます。 第1章では、境界知能が絡んだ近年の事件、学校でも気づかれない実情、社会での様子などを紹介し、なぜ境界知能に注目すべきかについて記しています。 第2章では、これまで論じられてきた境界知能をめぐる問題や歴史的経緯、知能の問題、これまでの取り組みについて、軽度知的障害と絡めながら説明していきます。 第3章では、境界知能の具体的な特徴について解説していきます。本書の核となる部分でもあります。おそらく境界知能の種々の認知的特徴や社会行動、運動面について具体的に記した書籍は国内では本書が初めてかと思われます。 第4章では、境界知能の国内の動向、海外の研究動向、国際会議などについて紹介しています。

宮口幸治 立命館大学教授。一般社団法人 日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書に、2020年度の新書部門ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)、『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(1~5巻)、『マンガでわかる!境界知能の人が見ている世界』(いずれも扶桑社)などがある。

第1章 境界知能はなぜ今、注目すべきか 空港のトイレで女児を出産して殺害 境界知能でなく軽度知的障害だった可能性 なぜ遺体を隠し持ってカフェに入れたのか? 知的な障害が推定される状況 支援が必要な「気づかれない人たち」が大勢いる 障害に気づかれず冤罪につながった事件 100万人以上の知的障害者が見逃されているかもしれない 「障害」ではない「境界知能」は配慮されない 境界知能の共通点とは? 教育機関にすら見逃される境界知能児 約7人に1人が境界知能 境界知能の基礎知識 第2章 境界知能と軽度知的障害の歴史的背景 紀元前から近代までの記録 知的障害者への教育の可能性が示唆された「アヴェロンの野生児」 セガンの教育法は特別支援教育に大きな影響を与えた 「知能指数(IQ)」の考案 「ゲッシュタルト心理学」による心理学的アプローチ 知能検査による境界知能の発見 知的障害をめぐる巧言が優生思想へ ファシズムと戦争による知的障害教育への弊害 第二次世界大戦後の障害児教育 新たな教育的ニーズ 知的障害の定義の変遷 境界知能の位置づけとは 「境界知能・軽度」と「中等度・重度」の別カテゴリー化 境界知能の取り扱いの変遷 境界知能と学習障害、軽度知的障害との関係 境界知能がますます支援から遠ざかる理由 そもそも「知能」とは何なのか 広く認められ始めた「CHCモデル」 IQ値の解釈への留意点 知能は変動する? 知的障害教育のこれまでの取り組み セガン モンテッソーリ ヴィゴツキー フォイヤーシュタイン 石井亮一 遠山啓 第3章 境界知能の特徴 境界知能の認知発達の推移 境界知能の人たちの認知特性の各論 (1)記憶 (2)言語 (3)数概念 (4)注意 (5)視覚認知 (6)聴覚認知 (7)学習 (8)問題解決 境界知能の心理・社会面の特徴 (1)性格特性 (3)メンタルヘルス (4)保護者との関係 (5)反社会的行動 (6)運動能力 第4章 境界知能の近年の動向 国内におけるこれまでの動向 海外研究の動向 国際会議の動向 学習の土台を育む取り組み~コグトレ(COG‐TR)